太極拳などの中国武術や中国拳法の、特に「北派拳術」と呼ばれる中国の北側の武術の訓練において、「力」をぬく事を強調します。
一般的には、これを「放鬆」(ファンソン)と呼びます。
この事に近い言葉として、現代では「脱力」という言葉を使う場合があります。
しかし、この「放鬆」(ファンソン)と「脱力」という言葉は、同じ意味ではありません。
一般的に言われる「脱力」の意味は、ただ力を抜く事です。
もちろん、「放鬆」(ファンソン)においても、このような意味は一部含まれます。
しかし、「放鬆」(ファンソン)と呼ばれる言葉は、ただ力を抜く事ではなく、「余分な力を抜く」という事です。
言い換えるならば、余分でない力は、入れてなければなりません。
そして、「型」(形)や「技」を形成するのに必要な「力加減」を理解する事でもあります。
それぞれの技の力加減は、一定ではありません。
また、門派(流派)によっても、考え方は変わってきます。
例えば、当流の八極拳にも「放鬆」(ファンソン)の概念は存在しますが、仮に全ての動作の力の入り具合の平均値のようなものがあるとすれば、一般的な太極拳の多くの門派に比べて、力は入っていると言えます。
これは、太極拳の門派や系統によっても変わってきます。
比較的、力が入った状態を維持して動作を行う太極拳もあれば、極限まで力を抜く事を強調する門派もあります。
また、陳式太極拳では、発勁の時のみ、瞬間的に力を入れる門派もあります。
つまり、力の入れ具合を0から100に急激に変化させ、この落差によって威力を作るという事です。
また、当流の楊式太極拳では、究極的に力を抜く事を目指します。
もちろん前述の余分な部分の力を抜くという事ですが、この余分と判断される部分が、他派の太極拳に比べて大きいとも言えます。
つまり、「放鬆」(ファンソン)という言葉は、門派や系統によって、捉え方に差異があるという事だと言えます。
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